写真で綴る登山と旅のあれこれ

南アルプス白峰三山(北岳・間ノ岳・農鳥岳)⑤

4日目:北岳山荘~八本歯のコル~広河原

2018/8/20(月)

北岳山荘(5:40)→八本歯のコル(7:00)→左俣→二俣(9:00)→大樺沢→白根御池小屋分岐(10:30)→広河原山荘(10:50)→広河原(11:00/12:30)--バス--北沢峠(12:55/13:10)--バス--仙流荘(13:55)

2:00

”パキン!!”

頭の辺りで金属が弾ける音がした

激しい風にテントが煽られ
ペグが地面から抜けた音だった

張力を失ったテントは
みるみる浮き上がり始めた

もう寝たふりはできなかった

・・・

恐る恐るテントの外へ出てみる

生温く感じる風が
テントを地面から引き剥がすように
執拗に吹き荒れていた

気温11.5℃

前日より10℃近くも高い
どうりで温く感じるはずだ

前日から気候が
一変してしまったらしい

ヘッ電を灯けてテントの周囲を照らしても
抜けたペグは見つからなかった

遠くまで飛んでいってしまったのか

予備のペグを打って急場を凌いだ

雨が降っていないのは幸いだった

よく見ると張り綱は対角に2本だけ
…というか始めから忘れていた。。

これでよく持ちこたえたというべきか。。

・・・

みると隣のテントは
こんな状況で撤収を始めていた

”俺はアルミのペグは信用しない”

前日にそう話していた若い男性だった

こんな夜中にテントを撤収して
一体どうするつもりだろう

見渡すと他にも
富士山を望む最前列のテント数張が
姿を消していることに気が付いた

御来光のために早出したのか
小屋に避難したんだろうか

・・・

目の前の空には
オリオン座が輝いていた

冬の星座のはずなのに…?

一昼夜の間に
四季の星座が巡っている

実は初めて知った。。

星座の自転と公転

どこかで習ったような気も…

あと3か月もすれば
この星空は21時頃の空になる

今年初めて感じた冬の気配だった

北岳_テント場_星

修復を終えてテントに戻ったところで
もう一睡もできなかった

前後、上下、左右に激しく伸縮する
テントを内側から手で抑えながら
狂った風の音を聞いていた

さながら暴れる”ふなっしー”だ

・・・

時々テントから外の様子を眺めると

富士山の五合目の小さな明かりに
心が落ち着いた

このときはまだ晴れていた

北岳山荘_夜景_甲府

・・・

夜明け

北岳山荘_日の出

風は弱まることなく吹き続け
ほとんど一睡もできなかった

最終日は日の出を眺めて
ノンビリして帰るつもりだったのに

眠れずに色々と考えていると
耐えがたい空腹を感じるようになった

この日の朝食は
冷えて固くなったカレーパン1個

コッヘルのフタで温めて
ココアとコーヒーで飲み込んだ

見ると前夜のレトルトカレーと同じ銘柄
賞味期限は3日過ぎていた

・・・

広河原12:30のバスに乗るには
十分な時間があった

でも体と心は
もう限界だと音を上げていた

帰ろう!

北岳山荘_眺め

強風で一人で
テントを撤収するのは初めてだった

これが意外と難しい

不意の風にテントが転がって。。
今までにも何度か失敗していた

でもここは稜線

油断できなかった

いつもは荷物を全部外に出して
圧縮しながらパッキングするのだけど

テントの中で全ての荷物をパッキング
というより丸ごと詰め込んだだけで

最後に自分が外へ出るとき
テントが空になる瞬間も油断できず

石を重りにしてテントを畳んだ

まるでズボンより先にパンツを脱ぐような感覚、、

これもいい経験になった

北岳山荘_テント場

北岳山荘~八本歯のコル

5:40
下山開始

北岳山荘_トラバース道

最後の最後にガス
でも本来の夏山に戻った気もする

北岳_イワヒバリ

高山植物の宝庫で知られる北岳でも
この辺りは特に貴重な植物が多いそう

キタダケソウ群生地

なかでも人気は
”キタダケソウ”

文字通り北岳の固有種で
ここでしか発見されていない

花期は残雪の6~7月上
ここまで登るだけでも容易ではなさそうだ

ハクサンイチゲやニリンソウに似た白い花
咲いていても分からなかっただろうけど。。

キタダケソウ_保護

北岳の山頂は経由せずトラバース道で
八本歯のコルを越えて広河原に下るルート

北岳_登山道

北岳の山頂直下を周り込むように
急峻な岩の斜面を水平に進む

想像していたのは
高山植物のユートピアだった

北岳_登山道

想定外の険しさに
不安になり始めたところで

先行者を見つけてホッとした

チョビヒゲの無口な男性
脚を傷めているのか一歩が重かった

しばらく一緒に歩いたけれど
微笑みかけられただけで言葉はなかった

北岳_登山道

強風が吹き抜ける尾根の下り
ガスの向こうは晴れていそうだ

北岳_登山道

たった一晩で前日までとは
全く違う山の風景

北岳_登山道_八本歯の頭

昨晩の風はこの雲を連れてきたのか

北岳_雲海_富士山

振り返れば北岳山荘とテン場
名残り惜しい眺めだった

北岳山荘とテント場

最後にハシゴで八本歯のコルへ

北岳_八本歯のコル

八本歯のコル~二股~広河原

稜線を外れると風がなくなった

大樺沢の長い下りの先に
御池小屋と広河原も見える!

北岳_登山道_左俣

ここから幾重も続く丸木のハシゴで
一気に高度を下げる

横木が斜めだったり
手すりがない区間もあるので
特に雨の日は要注意

階段ではなく”ハシゴ”

下りも後ろ向き(登りと同じ姿勢)が正解

サーカスの玉乗り状態で下る人もいて
見ていてハラハラした。。

北岳_登山道_ハシゴ

この日は平日にもかかわらず
登ってくる人が多かった

団体とすれ違う度に発生する渋滞も
ちょうどいい休憩だ

キタダケ_登山道_ナナカマド

見上げれば北岳のバットレス

いつの間にガスが晴れていた

微かに人の声が反響して聞こえる
どこかに登攀中の人がいるらしい

北岳バットレス

”あんなところを登る奴は馬鹿だ”

20人近い団体を引き連れたリーダーが
岩壁に向かって大声で言った

そう
正気だったらあんなところは登れない

でも山好きなら
そんな山馬鹿に多かれ少なかれ
羨望を感じない人はいないだろう

北岳山頂に飛び出す瞬間
一体どんな気持ちなんだろう

北岳バットレス

長いハシゴの次は
左俣から大樺沢へ入っていく

写真では分からないけど
かなりの急こう配

北岳へは草スベリで登り
ここを下りに使う人が多いのも納得

北岳_二俣

崩れやすい急斜面
すぐ横を辞書大の角ばった石が
飛び跳ねていった、、

・・・

途中から年配の男性と
同じペースになった

前日の行程も全く同じで
北岳山荘から農鳥を往復していた

聞けばなんと御歳79!

聞き間違いかと思った。。

北岳_二俣_雪渓

すでに百名山を完登して
二百名山に挑戦中だとか

毎日ホームグラウンドの山で
3万歩の基礎トレをされているそう

着いていくのがやっとだった。。

”若さの秘訣は目標を持ち続けること”

いい刺激もらいました

北岳_トリカブト

飽きるほど延々と続く下り
足のダメージが限界に近かった

北岳_二俣_雪渓

今回は久しぶりに
縦走用の登山靴を履いていた

しばらく封印していた理由を
すっかり忘れていた

両足の親指とカカトに水ぶくれ

爪も潰してしまった

また真っ黒になって剥がれてしまう
温泉で少し気まずいのだ。。

北岳_ベニヒカゲ

・・・

二俣
休憩スペースと仮設トイレがある
ここで大休止にした

北岳_二俣

道端にうなだれるように
へたり込む高校生くらいの3人

広河原から北岳山荘まで
一日で登るつもりらしい

持ってきたコーラが
残り少ないと嘆いている

北岳_登山道

”虫がストレスやわぁー”

頭からネットを被った一人は
しきりに顔の周りを気にしていた

集団登山でメンバーに
刺々しい言動が現れ始めたら

血糖値が下がっているサイン

教えてやりたかったが
自分も行動食が尽きていた

ちなみに今回の行程で
吸血アブには一度も遭わなかったのだけど

北岳_登山道

最後に振り返って北岳

一旦晴れた山頂が
再びガスに覆われ始めていた

これが見納めだった

北岳_登山道

大樺沢の樹林帯へ

日陰に入っても標高が下がり
蒸し暑さが上回っていた

北岳_登山道_大樺沢

曲がったダケカンバの幹を
かい潜るように進む

台風の後などは崩落で
通行止めになることも多いそう

北岳_登山道_大樺沢

野呂川の大きな水音が聞こえてきたら
ゴールは近い

北岳_登山道_大樺沢

・・・

10:30
広河原山荘に無事下山!

北岳山荘

山で出会った
79歳のオッチャンも同時だった

”またどこかで”

お互いに名前も知らないまま
握手をして別れた

もう次の目標に
登り始めているような足取りだった

北岳山荘

11:00
広河原

広河原_バスターミナル

山旅の余韻に浸りながら
2時間後のバスを待って帰った

かくして
今年の夏山が終わったのでした

・・・

”しばらく山には登りたくない”

久しぶりに思った

でもこれは
消化しきれないほどの充実感の裏返し

しばらくするとまた登りたい衝動が
より大きなリバウンドになって戻ってくるんだな。。

~おわり~

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  1. 2018/09/23(日) 22:30:32|
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近所の六甲山から全国の名山まで
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